新リース税制の実務対応の方向性その1


リース会計基準の見直し

以前の会計基準では、リース取引は大きく分けて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類がありましたが、取引の実態をより正確に財務諸表に反映させるため、新しい会計基準が導入されました。

原則「全てのリース」を資産計上へ

新リース会計基準の最大の変更点は、原則として全てのリース取引を売買取引に準じた会計処理の対象とする点です。つまり、特別なケースを除き、オペレーティング・リースであっても、リース資産とリース債務を貸借対照表に計上する(オンバランス処理を行う)ことになったのです。
この変更は、リース契約が実質的に資産の使用権を移転する取引であるという考え方に基づいています。

リース会計の鍵:「リース期間」の新たな定義

新しいリース会計基準では、リース取引を資産計上する際に、その金額を算定するための重要な要素として「リース期間」の定義が大きく変わりました。旧基準では、単に契約書に記載された「解約不能期間」がリース期間の原則でしたが、新基準では、経済的な実態をより重視してリース期間を算定することになりました。
新基準における「リース期間」は、以下の3つの期間の合計として算定されます。

1. 解約不能期間

リース契約において、賃借人がリース契約を解約することができないと定められている期間です。

2. 延長オプション期間

賃借人がリース期間を延長するオプションを行使することが「確実」と判断される場合の延長期間です。

3. 解約オプション期間

賃貸人がリース期間を解約するオプションを行使しないことが「確実」と判断される場合の期間です。
これらの「確実」性の判断には、経済的なインセンティブが大きく影響します。単に契約書上の期間だけでなく、将来の経済的な動機付けに基づいて、実際のリース期間を推定することが求められます。

新基準の適用時期と実務への影響

この新しいリース会計基準は、令和9年4月1日以降に開始するリース取引から適用されています。
新基準への変更は、特にこれまでオフバランス処理されてきた多くのオペレーティング・リース契約がオンバランス化されることを意味します。これにより、企業の貸借対照表にリース資産とリース債務が計上され、総資産や負債の額が増加することになります。結果として、企業の負債比率やROA(総資産利益率)といった財務指標に影響を与える可能性があるため、企業は自社のリース契約を精査し、新たな会計処理に対応する必要があります。


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