海外取引とインボイス経過措置の適用/最新税制情報を岡崎市の税理士法人アイビスが解説
インボイス制度導入に伴って、事業者の納税や事務の負担増加を軽減するため、各種の経過措置が設定されています。
経過措置には、「海外取引だから適用される・されない」というものは原則としてありませんが、海外取引にも関係してくる場合があります。
今回の記事ではこちらについて解説していきます。
1.納税額や事務負担を軽くする経過措置
下記の表の適用の有無は取引相手が国内の事業者でも国外事業者でも、取引が国内取引でも国外取引でも基本的に変わりません。
経過措置はインボイス制度の導入を原因として生じる負担を軽減するためのものなので、インボイス制度の対象になる取引(国内取引となるもの)に対してだけ、経過措置の適用の可能性があります。
経過措置 | 概要 | 適用対象期間・提出日 | |
2割特例 | 免税事業者が新たにインボイス登録事業者になる場合に 納税額を課税売上に係る消費税額の2割とすることができる |
R5.10.1-R8.9.30の 属する課税期間 |
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簡易課税届出 | 2割特例を適用したインボイス登録事業者が次の課税期間に 簡易課税の適用を受けたい場合に届出の期限が緩和される |
簡易課税の適用を受ける 課税期間の末日 |
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免税事業者からの仕入 | インボイス登録事業者以外の事業者からの課税仕入であっても 仕入税額相当額の一定割合が仕入税額控除できる |
R5.10.1-R 8.9.30⇒80% R8.10.1-R11.9.30⇒50% |
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少額特例 | 一定規模以下の事業者が国内で行う課税仕入で 税込単価が1万円未満のものはインボイスの保存を要しない |
R5.10.1-R11.9.30の間に 国内で行う課税仕入 |
2.2割特例
1.2割特例を使える年と使えない年に注意
2割特例とは、「もし登録事業者にならなければ免税事業者に該当していた課税期間」において、申告上控除できる仕入税額を課税売上に係る消費税額の「8割」とみなす方法です。
○申告書第一表の該当欄にチェックするだけで適用が可能
○適用できる課税期間は、令和5年10月1日~令和8年9月30日の日の属する課税期間
▲2割特例は基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間については適用されない
2.輸出は免税でも課税売上になる
免税になる輸出取引はもともと「国内において行う課税資産の譲渡等」であって、引渡しの手段が輸出である場合に限って課税が免除されます。
3.簡易課税届出
1.2割特例のあとは適用したい期間中の届出でよい
基準期間の課税売上高が5,000万円を超えていなければ簡易課税を適用することができます。
簡易課税は原則として、適用を受けようとする課税期間の開始の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。
○一度2割特例の適用を受けた事業者が、次の課税期間から簡易課税の適用を受けたい場合
その課税期間中に届出をすれば、課税期間の開始の前日までに提出されたものとみなされる
2.登録初年度も適用期間中の届出でよい
○免税事業者が令和5年10月1日~令和11年9月30日の日の属する課税期間に登録事業者となる場合
登録日の属する課税期間中に届出書を出せば、登録初年度の課税期間から簡易課税の適用を受けられる
4.免税事業者からの仕入
1.インボイスがなくても80%控除を3年保証
インボイス制度導入前は、取引が「国内で行う課税仕入」に該当する限り、相手が課税事業者か免税事業者かを問わず、対価の7.8/110を仕入税額控除の対象とすることができました。
これに対して制度導入後は、国内で行う課税仕入れに該当しても、インボイスがなければ原則として仕入税額控除ができません。
○免税事業者からの仕入に係る経過措置
令和5年10月1日~令和 8年9月30日の間に国内で行う課税仕入については仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日~令和11年9月30日の間に国内で行う課税仕入については仕入税額相当額の50%
2.インボイス対象取引でなければ適用不可
▲不課税取引はインボイス制度の対象外のため、経過措置の適用対象にはならない
5.少額特例
少額特例は、一定規模以下の事業者が行う1万円未満の課税仕入については、インボイスの保存がなくとも仕入税額控除ができるというもので、この特例は、事務負担の軽減措置という位置付けです。
○一定規模以下とは、課税売上高(輸出免税を含む)が基準期間で1億円以下か、特定期間で5,000万円以下かのどちらかに該当する場合
○取引先が登録事業者であるかどうかを問わず適用
新しいインボイス制度には、納税や事務の負担を軽減する経過措置が用意されていますが、かなり細かくて理解しにくい部分もあります。
インボイス制度は、海外取引消費税の諸制度(輸入消費税や輸出免税など)そのものにはあまり重大な影響は及ぼしませんが、国内取引となるものはインボイス制度の対象になり、経過措置が適用できる可能性があります。
「海外取引の中で、内外判定で国内取引に該当するもの」には注意をしましょう。
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