自己作成書類の保存ルール/名古屋・岡崎市の税理士法人アイビスの解説

前回の記事で優良な電子帳簿の保存のルールについて解説しました。
今回の記事では、請求書などの国税関係書類をシステムで作成した場合(自己作成書類)の保存ルールを解説します。

自己作成書類の保存ルール

請求書などの国税関係書類を一貫して電子計算機を用いて作成する場合には、見読可能装置(ディスプレイ等)やシステムの操作説明書等の備付けなど、電帳法で定められた要件を満たしている場合には、紙での保存に代えて、データのまま保存することができます。大切なポイントは以下のとおりです。

(1)保存ルールは、一般電子帳簿とほぼ同じ

保存ルールは、「一般電子帳簿」とほぼ同じ以下の4点です。

 ①システムの操作説明書や保存の事務手続きを明らかにした書類等を備え付けておくこと
 ②ディスプレイやプリンタ、パソコンなどの見読可能装置等を備え付けておくこと
 ③保存したデータをディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
 ④税務職員の質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしておくこと 

書類の作成に当たっては、「一貫して電子計算機を使用して作成すること」、つまり手書きなどが加わらないことが大前提です。したがって、例えば、パソコンで作成した請求書を書面に出力し、それに手書きで新たな情報を付け加えたものは、一貫して電子計算機を使用して作成したものではありませんので、その請求書は「紙で保存」しなければならないこととなります。

(2)保存の対象は、国税関係書類(決算関係書類等と取引関係書類)の全部または一部

保存の対象は、国税関係書類、すなわち棚卸表や貸借対照表・損益計算書などの決算関係書類等と請求書の写しなどの取引関係書類です。
システムで作成した書類をデータで保存するかしないかはあくまで任意であり、また何を保存するかについても、書類の作成・保存の実態に応じて、例えば国税関係書類の種類ごと、本店又は事業部若しくは事業所ごと、作成システムごとなど合理的な区分に従って保存することが可能です。

(3)パソコンで作成した請求書に代表印を押しているだけなら、データ保存OK

パソコンで作成した請求書を書面に出力し、代表者印を押して郵送している場合にはどうなるでしょうか?やはり紙で保存しなくてはいけないのでしょうか?
この場合には「それ以外に加筆等による情報の追加等がない限り、自己が一貫して電子計算機を使用して作成している場合に該当するものとして取り扱って差し支えありません。」とされています。つまり、代表者印や社判を押しているだけの違いならば、データで保存してもOKということになります。

(4)保存するデータは「その書類が作成された時点のもの」

一般的に言えば、保存すべきデータは「作成中のものをいうのではなく、当該書類が作成された時点のもの」ということとなります。
ここでいう「当該書類が作成された時点のもの」とは、請求書や見積書などのように相手方に交付される書類の作成データであれば、これを「書面に出力して相手方に交付した時点でのデータ」を保存することになりますし、決算関係書類等のように相手方に交付されない書類の作成データであれば、「その書類の作成を了したと認められる時点でのデータ」ということになります。

(5)請求書発行システムで請求書を作成、書面に出力している場合には、発行システムのデータベースを保存しておけばよい

国税庁では、「データベースの内容を定形のフォーマットに自動反映させる形で請求書等を作成・出力している場合には、当該データデースが保存されていれば実際に相手方へ送付した請求書等と同じ状態のものを確実に復元できるから」という理由で、「税務調査等の際に、税務職員の求めに応じて、実際に相手方へ送付したものと同じ状態を定型のフォーマットに出力するなどの方法によって遅延なく復元できる場合には、当該データベースの保存をもって請求書等の控えの保存に代えることとして差し支えありません。」としています。
10月から開始するインボイス制度においては、適格請求書等を交付した適格請求書発行事業者は、これらの書類の写し又は当該電磁的記録を保存しなければならないこととされています。せっかくシステムで作成した適格請求書の写しを、わざわざ紙に出力してファイリングするなどして保存するのは非効率です。請求書の作成に当たって入力したデータベースを保存しておけばよいことになります(※)ので、上記(1)①~④の保存要件を満たしたうえで、電子的に保存することを検討してみてはいかがでしょうか?
  
 ※システムで作成・発行した請求書をメールで送付したり、クラウドにアップロードしたりして相手方に交付する場合には、電帳法上の「電子取引」として、検索機能の確保などの要件に従った形で保存する必要がありますので、注意してください。

(6)検索機能を確保して保存していれば、税務職員の質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じなくてもよい

作成した書類のデータに検索機能を付けて保存をした場合には、上記(1)④の「税務職員の質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じること」の要件は不要となります。ここで求められる検索機能とは、①取引年月日その他の日付を検索の条件として設定すること、②その範囲を指定して条件を設定することができること、の2点です。

(7)課税期間の中途からでも、自己作成書類のデータ保存は可能

帳簿については、課税期間の途中から電子帳簿として保存することはできませんが、自己作成書類の場合、課税期間の中途からであってもそれ以後の作成分をデータとして保存できます。なお、作成した書類のデータでの保存に当たっては、データでの保存を開始した日とデータでの保存を取りやめた日を明確にしておく必要があります。

10月から始まるインボイス制度では、発行した適格請求書の写しの保存が求められます。電帳法上の要件を満たしてデータのままで保存すると、業務の効率化・ペーパレス化につながります。

最後に

名古屋・岡崎市にある税理士法人アイビスでは、このような事業者様に役立つ情報を随時配信しております。

ご不明な点がございましたらお気軽に税理士法人アイビスまでお問い合わせくださいませ。


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