相続不動産の帰属制度/岡崎市 税理士法人アイビス 相続サポートセンターは相続・相続税のご相談を受付中です
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2023年4月にスタートした「相続土地国庫帰属制度」について、制度のポイントを簡単に説明したいと思います。
相続土地国庫帰属制度のポイント
・相続又は相続人への遺贈により(相続人に対する遺贈に限られる)手に入れた土地について、所有者の申請により、承認された場合は、土地を国に引き渡すことができます
・制度の利用には、審査手数料及び負担金の納付が必要です。
・国が引き取ることができる土地については一定の要件があります。
・申請先は、土地の所在する法務局の本局です。
相続等で取得した土地を国に引き渡したい方は、
「1 法務局への相談」
「2 申請書類の作成・提出」
「3 負担金の納付」
の3つのステップを経ることで、土地を国に引き渡すことができます。
ステップ1 法務局への相談
・土地の所在する法務局の本局の相談予約をお取りください
・持参された資料に応じ、可能な範囲で、国が引き取ることができる土地に該当するか等について相談を行いますので、国への引渡し(国庫帰属)を希望する土地の状況等が分かる資料や写真を可能な限りお持ちください。
・申請に当たって必要になる書類などについての相談を行います。
<資料の具体例>
・登記事項証明書又は登記簿謄本
・法務局で取得した地図又は公図
・法務局で取得した地積測量図
・その他土地の測量図面
・土地の状況・全体が分かる画像又は写真
ステップ2 申請書類の作成・提出
・必要な申請書類・添付書類を作成、準備します。
・作成した書類は、相談予約を取って提出前に法務局に確認してもらうことが望ましいです。
・書類に問題がなさそうであれば、審査手数料の額に相当する収入印紙を貼り、法務局に提出します。
・申請先は、土地の所在する法務局の本局です。
・提出は窓口にお持ちになる方法と郵送による方法があります。
・申請後は手数料を返還できないので注意が必要です。
<自分で新たに作成する書類>
1 申請書
2 申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
3 申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
4 申請に係る土地の形状を明らかにする写真
<用意する書類>
1 申請者の印鑑証明書
2 固定資産税評価証明書(任意)
3 申請土地の境界等に関する資料(あれば)
4 申請土地にたどり着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
5 その他相談時に提出を求められた資料
ステップ3 負担金の納付
・申請された土地について、審査の結果、国が引き取ることができると判断した場合、帰属の承認と通知とともに、負担金の納付を求める通知が届きます。
・負担金の額は一筆20万円が基準となりますが、土地の種目や面積、土地が所在する地域に応じて、面積単位で負担期を算定する場合もあります。
・通知に記載されている負担金額を期限内に日本銀行へ納付します。
・負担金が納付された時点で、土地の所有者が国に移転します。
・土地の所有権移転の登記は国が行います。
※重要 負担金が期限内に(負担金の通知が到達した翌日から30日以内)に納付されない場合は、国庫帰属の承認が失効します。
国庫帰属の承認が失効した場合は、同一土地について国庫帰属を希望する場合は最初から申請し直していただく必要があります。
申請ができない土地
土地の管理コストの国への不当な転嫁やモラルハザードの発生を防止するため、国庫帰属の要件が法令で具体的に定められています。
以下のいずれかの要件に該当する土地については国庫帰属ができません。
◇担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
◇建物の存する土地
通路その他の他人による使用が予定される土地として、①~④が含まれる土地
① 現に通路の用に供されている土地
② 墓地内の土地
③ 境内地
④ 現に水道用地・用悪水路・ため池の用に供されている土地
◇土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
◇崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のも
の)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
◇収益が現に妨害されている土地(軽微なものを除く。)
◇そのほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する以下の土地
(1) 災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生
じさせるおそれを防止するため、措置が必要な土地
(2) 土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地
(3) 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林
(4) 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
(5) 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
◇除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
申請の段階で直ちに却下となる土地
◇建物がある土地
建物は、一般に管理コストが土地以上に高額であること、また、老朽化すると、管理に要する費用や労力が更に増加するだけでなく、最終的には建替えや取壊しが必要になるため、承認申請を行うことができません。
担保権や使用収益権が設定されている土地
対象となる土地に、抵当権等の担保権や、地上権、地役権、賃借権等の使用収益権が設定されている場合、国が土地の管理を行う際に、これらの権利者に配慮しなければならず、場合によっては、担保権が実行されて国が土地所有権を失うことになることも考えられるため、承認申請を行うことができません。
◇他人の利用が予定されている土地
実際に土地所有者以外の者により使用されており、今後もその使用が予定されている土地については、これを国庫に帰属させた場合、その管理に当たって、国と使用者等との間で調整が必要となるため、承認申請を行うことができません。
【政令で定める具体的な類型】
(1) 現に道路として利用されている土地
(2) 墓地内の土地
(3) 境内地
(4) 現在、水道用地、用悪水路、ため池として利用されている土地
◇特定有害物質により土壌汚染されている土地
◇境界が明らかでない土地・所有権の存否や帰属、範囲について争いがある土地
隣接する土地の所有者との間で所有権の境界が争われている土地や、承認申請者以外にその土地の所有権を主張する者がいる土地など、
土地の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地については、その所有権を国庫に帰属させると、土地の管理を行う上で障害が生じるため、
承認申請を行うことができません。
不承認要件(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地)
◇一定の勾配・高さの崖があって、かつ、管理に過分な費用・労力がかかる土地
政令で定める崖の基準(勾配30度以上+高さ5メートル以上)に該当する崖がある土地であって、
通常の管理に当たり過分な費用又は労力(※)を要する場合には、帰属の承認をすることができません。
※ 過分な費用又は労力を要する例について
住民の生命等に被害を及ぼしたり、隣地に土砂が流れ込むことによって被害を及ぼす可能性があり、
擁壁工事等を実施する必要があると客観的に認められるような場合などが考えられます。
◇土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
以下のア・イの2要件全てに該当する土地については、帰属の承認をすることができません。
ア 工作物、車両又は樹木その他の有体物が存する
イ その有体物(※)が土地の通常の管理又は処分を阻害する
※ イの考え方について
森林において樹木がある場合や、宅地において安全性に問題のない土留めや柵等がある場合など、その土地の形状・性質によっては、地上に有体物が存したとしても、必ずしも通常の管理又は処分を阻害するわけではありません。
<想定される有体物の具体例>
・果樹園の樹木
・民家、公道、線路等の付近に存在し、放置すると倒木のおそれがある枯れた樹木や枝の落下等による災害を防止するために定期的な伐採を行う必要がある樹木
・放置すると周辺の土地に侵入するおそれや森林の公益的機能の発揮に支障を生じるおそれがあるために定期的な伐採を行う必要がある竹
・過去に治山事業等で施工した工作物のうち、補修等が必要なもの
・建物には該当しない廃屋
・放置車両 など
◇土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地(※)については、帰属の承認をすることができません。
※ 除去の必要性の考え方について
土地の形状・性質に照らして、その土地の通常の管理又は処分をするに当たり支障がない有体物
(例:広大な土地の片隅に存する小規模な配管など)と認められるものであれば、除去しなくても特に問題はないものとして取り扱います。
<想定される有体物の具体例>
・産業廃棄物
・屋根瓦などの建築資材(いわゆるガラ)
・地下にある既存建物の基礎部分やコンクリート片
・古い水道管
・浄化槽
・井戸
・大きな石 など
◇隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
<想定される具体例>
・申請地に不法占拠者がいる場合
・隣地から生活排水等が定期的に流入し続けており土地の使用に支障が生じている場合
・別荘地管理組合から国庫帰属後に管理費用を請求されるなどのトラブルが発生する可能性が高い場合
・立木を第三者に販売する契約を締結している場合
など
◇その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
・土地に生息するスズメバチ・ヒグマなどにより、当該土地又はその周辺の土地に存する者の生命若しくは身体に被害が生じ、又は生ずるおそれがある場合
・土地に生息する病害虫により、当該土地又はその周辺の土地の農作物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがある場合 など
◇適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林
<想定される具体例>
・間伐の実施を確認することができない人工林
・一定の生育段階に到達するまで更新補助作業が生じる可能性がある標準伐期齢に達していない天然林
◇国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
<想定される具体例>
・土地改良事業の施行に係る地域内にある土地の所有者に対して、近い将来、土地改良法(昭和24年法律第195号)第36条第1項に基づき金銭(※)が賦課されることが確実と判明している土地
(※)土地改良事業で整備される水利施設等の建設費用、当該事業で整備された水利施設等の利用や維持管理に係る経常的経費に充てられます。
◇国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地
<想定される具体例>
・土地改良法第36条第1項の規定により、組合員(土地所有者)に金銭債務(※)が賦課されている土地(例:土地改良区に賦課金を支払っている土地)
※ 同法第42条第1項の規定により、当該金銭債務は農地の所有権を取得した者に承継されることとなるため、国庫帰属がされた場合には、国に当該金銭債務が承継されることとなります。
※ 所有者が法務局の審査完了までに金銭債務を消滅させた場合は、本要件には該当しないこととなります。