新しい賃上げ促進税制④/岡崎市の税理士法人アイビスが解説
従業員の給与引き上げを支援する「賃上げ促進税制」。30年近く横ばいの状態が続く日本の賃金事情の改善を目指す制度として2013年4月からスタートし、2022年度の税制改正により法人税の控除率がさらに引き上げられました。
今回は令和4年度税制改正による大企業向け(資本金1億円超の企業など)「賃上げ促進税制」についてご紹介します。
改正前後の適用要件と税額控除額
上乗せ措置なし
改正前 | 改正後 | |
適用要件 | ・新規雇用者給与等支給額が 前年度より2%以上増加 |
・継続雇用者給与等支給額※1が前年度より 3%以上増加 ・一定の大企業については、従業員への 還元や取引先への配慮を行うこと等を 宣言していること※2 |
税額控除額 | 控除対象新規雇用者給与等支給額 × 15% | |
控除限度額 | 法人税額 × 20% |
※1:「継続雇用者給与等支給額」とは、継続雇用者(当期及び前期の全期間の各月分の給与等の支給がある雇用者で一定のものをいう。)に対する給与等の支給額をいいます。
※2:資本金10億円以上、かつ、常時使用従業員数1,000人以上の大企業については、自社のウェブサイトに宣言内容を公表したことを経済産業大臣に届け出る必要があります(以下のパターンも同様です)。
上乗せ措置A:継続雇用者給与等支給額が前年度より4%以上増加した場合(改正後のみ)
改正前 | 改正後 | |
適用要件 | ー | ・継続雇用者給与等支給額が前年度より4%以上増加 ・一定の大企業については、従業員への還元や取引先 への配慮を行うこと等を宣言していること※2 |
税額控除額 | ー | 控除対象雇用者給与等支給増加額 × 25% (基本15%+上乗せA 10%=25%) |
控除限度額 | ー | 法人税額 × 20% |
上乗せ措置B:教育訓練費が前年度から20%以上増加した場合(上乗せ措置Aの適用なし)
改正前 | 改正後 | |
適用要件 | ・新規雇用者給与等支給額が 前年度より2%以上増加 ・教育訓練費が前年度から 20%以上増加 |
・継続雇用者給与等支給額が前年度より3%以上増加
・一定の大企業については、従業員への還元や取引先 への配慮を行うこと等を宣言していること※2 ・教育訓練費が前年度から20%以上増加
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税額控除額 | 控除対象新規雇用者等支給額 × 20% | 控除対象雇用者給与等支給増加額 × 20% (基本15%+上乗せB 5%=20%) |
控除限度額 | 法人税額 × 20% |
上乗せ措置Aと上乗せ措置Bの両方の要件を満たす場合(改正後のみ)
改正前 | 改正後 | |
適用要件 | ー | ・継続雇用者給与等支給額が前年度より4%以上増加
・一定の大企業については、従業員への還元や取引先 への配慮を行うこと等を宣言していること※2
・教育訓練費が前年度から20%以上増加
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税額控除額 | ー | 控除対象雇用者給与等支給増加額 × 30%
(基本15%+上乗せA 10%+上乗せB 5%=30%) |
控除限度額 | ー | 法人税額 × 20% |
大企業の研究開発税制等の不適用措置の強化
賃上げに消極的な大企業への措置として研究開発税制等の不適用措置が設けられました。
改正前 | 改正後 | |||
対象法人 | 大企業 | 右記以外の大企業 | 大規模な企業※3かつ前期黒字 | |
①賃上げ要件 | 継続雇用者の給与総額が前期を超えること | 継続雇用者の給与総額が
前期比1%増(令和4年度は0.5%増) |
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②設備投資要件 | 国内設備投資額が当期の減価償却費の3割超 | |||
③所得要件 | 当期所得が前期所得以下 |
※3資本金10億円以上かつ常時使用従業員数1,000人以上
上記の①~③の条件をいずれも満たさない場合、次の特定税額控除規定が不適用となります。
・研究開発税制 ・地域未来投資促進税制 ・5G導入促進税制
・デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
・カーボンニュートラル(脱炭素化)投資促進税制
今回は、大企業向け賃上げ促進税制の改正内容について紹介いたしました。
この改正により大幅な適用要件の変更があり、上乗せ措置の拡充により最大で30%の税額控除を受けることができます。
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